エイミー・エドモンドソンと心理的安全性|意味・定義・研究を解説
心理的安全性について調べると、「エイミー・エドモンドソン」という研究者の名前を目にすることがあります。
エイミー・C・エドモンドソンは、心理的安全性の研究で広く知られるハーバード・ビジネススクールの教授です。
心理的安全性という言葉そのものを単純に「エドモンドソンが最初に作った」と理解するよりも、職場やチームにおける心理的安全性を研究し、その重要性を広く知られるものにした代表的な研究者と捉えると分かりやすいでしょう。
エドモンドソンの研究では、人が質問、相談、失敗の報告、意見、懸念などを口にするときに感じる「対人関係上のリスク」に注目しています。
このページでは、エイミー・エドモンドソンとはどのような研究者なのか、心理的安全性をどのように捉えているのか、研究が始まった背景、そして私たちの職場でどのように活かせるのかをわかりやすく解説します。
エイミー・エドモンドソンとは
エイミー・C・エドモンドソンは、ハーバード・ビジネススクールで組織行動を研究する教授です。
特に、心理的安全性、チームワーク、組織学習、失敗からの学習などの研究で知られています。
心理的安全性に関する研究は、企業だけでなく、医療、教育、さまざまな組織のチームづくりにも影響を与えてきました。
また、心理的安全性をテーマとした代表的な著書に『恐れのない組織』があります。
心理的安全性について理論から深く理解したい人にとって、エドモンドソンの研究は重要な基礎の一つです。
エドモンドソンが研究した「チームの心理的安全性」
心理的安全性について考えるときに大切なのは、単に「安心できる職場」という意味だけで理解しないことです。
エドモンドソンは、チームの中で対人関係上のリスクを取っても安全だという共通した認識に注目しました。
対人関係上のリスクとは、たとえば次のような行動です。
- 分からないことを質問する
「そんなことも知らないのか」と思われる可能性があっても、必要なことを確認します。 - 失敗を報告する
自分の評価が下がるかもしれないという不安があっても、問題を早く共有します。 - 反対意見を言う
上司や多数派とは違う考えであっても、仕事のために必要な異論を伝えます。 - 助けを求める
自分だけでは解決できないことを認め、周囲に支援を求めます。 - 新しいアイデアを提案する
否定される可能性があっても、より良い方法を提案します。
こうした行動を安心して行えるかどうかが、心理的安全性を理解する重要なポイントです。
エドモンドソンの心理的安全性の定義をどう理解するか
エドモンドソンの研究では、心理的安全性は、チーム内で対人関係上のリスクを取ることが安全だという共有された認識として説明されています。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、職場に置き換えると分かりやすくなります。
「こんな質問をしたら恥ずかしいだろうか」
「この問題を報告したら怒られるだろうか」
「上司に反対したら嫌われるだろうか」
「助けてほしいと言ったら仕事ができないと思われるだろうか」
このような不安が強ければ、人は必要な発言を控えます。
反対に、「言っても大丈夫」「相談しても受け止めてもらえる」と感じられれば、必要な情報をチームに出しやすくなります。
エドモンドソンの研究は病院での意外な発見から進んだ
エドモンドソンの心理的安全性研究について語るうえで興味深いのが、医療チームを対象とした研究です。
当初、エドモンドソンは、より良く機能しているチームほど医療上のエラーが少ないのではないかと考えていました。
ところがデータを分析すると、良いチームほど、報告されているエラーが多いように見えるという意外な結果が出ました。
そこで詳しく調べると、「本当に失敗が多かった」のではなく、良い関係性のチームほど失敗を安心して報告できていた可能性が見えてきました。
反対に、心理的安全性が低いチームでは、問題が起きていても報告されず、見えにくくなっている可能性があります。
この発見は、「エラーが少なく見えるチームが必ずしも安全とは限らない」という重要な示唆につながります。
問題が少ない職場と「問題を言えない職場」は違う
これは一般企業でも同じことが言えます。
上司への報告がほとんどなく、トラブルも少ない部署を見ると、「このチームは問題なく機能している」と感じるかもしれません。
しかし、本当に問題がないのか、それとも問題を言えないのかは別問題です。
- ミスが報告されない
社員が怒られることを恐れている場合、小さな問題を自分の中だけで処理しようとします。 - 反対意見が出ない
上司に逆らうことが危険だと感じていれば、会議で全員が賛成する状態になります。 - 相談が少ない
相談すると能力不足だと思われる職場では、社員が一人で仕事を抱え込みます。 - 改善提案が出ない
過去に提案を否定された経験があれば、「言っても無駄」と考えるようになります。
静かな職場だから心理的安全性が高いとは限りません。
心理的安全性が重要なのは「人は自分を守ろうとする」から
職場で人は、仕事の成果だけでなく、自分が周囲からどう見られるかも気にしています。
無知だと思われたくない。
無能だと思われたくない。
面倒な人だと思われたくない。
否定的な人だと思われたくない。
こうした気持ちは珍しいものではありません。
そのため、発言することで自分の評価が下がる可能性があると感じれば、「黙っている」という選択が合理的になります。
心理的安全性を高めるとは、この対人リスクを必要以上に恐れず、チームの成果のために必要な発言をできる状態をつくることでもあります。
心理的安全性とチーム学習の関係
エドモンドソンの研究で重要なテーマの一つが、「チームが学習すること」です。
チームが成長するためには、行動した結果を振り返り、問題や失敗から学び、次の行動を変える必要があります。
しかし、失敗や疑問を安心して言えなければ、学習に必要な情報が集まりません。
- 失敗を共有する
何がうまくいかなかったのかをチームで確認することで、同じ失敗を防ぎやすくなります。 - フィードバックを求める
自分の仕事に改善点がないか周囲に聞くことで、学習の機会が増えます。 - 実験する
新しい方法を小さく試し、結果を確認しながら改善します。 - 異論を出す
一つの考え方だけでなく、多様な視点を持ち寄ることで判断の質を高めます。
心理的安全性は、こうした学習行動を行いやすくする土台になります。
心理的安全性と失敗の関係
エドモンドソンの研究では、「失敗からどう学ぶか」も重要なテーマです。
ただし、すべての失敗を肯定するという考え方ではありません。
避けられた失敗を何度繰り返してもよい、という意味ではありません。
大切なのは、失敗を隠すことではなく、原因を明らかにして学習につなげることです。
- 失敗を早く共有する
小さい段階で報告できれば、被害が拡大する前に対処できます。 - 原因を考える
個人の注意不足だけではなく、仕組みや手順に問題がなかったかを確認します。 - 学びを共有する
一人の失敗をチーム全体の知識に変えることで、同じ問題の再発を防ぎます。 - 新しい挑戦から学ぶ
不確実性のある新しい取り組みでは、すべてを最初から正確に予測することはできません。小さく試して学ぶことが重要です。
心理的安全性は「失敗しても何でも許される」という意味ではない
エドモンドソンの心理的安全性を理解するときに、特に注意したい点です。
心理的安全性が高い職場とは、失敗しても責任を取らなくてよい職場ではありません。
むしろ、問題を隠さず共有し、原因を正しく分析して改善できることが重要です。
何でも許すことと、安心して失敗について話せることはまったく異なります。
心理的安全性は「ぬるま湯」ではない|よくある勘違い・誤解もあわせてご覧ください。
エドモンドソンとGoogleの心理的安全性研究はどう関係する?
心理的安全性について調べると、エイミー・エドモンドソンとGoogleの両方がよく登場します。
ここは混同しやすいポイントです。
心理的安全性のチーム研究で重要な先行研究を行ったのがエドモンドソンです。
その後、Googleが自社の効果的なチームを分析した「プロジェクト・アリストテレス」で、心理的安全性を重要な要素として取り上げたことで、ビジネスの世界にも広く知られるようになりました。
つまり、「Googleが心理的安全性という概念を作った」ということではありません。
Googleと心理的安全性の関係については、Googleが注目した心理的安全性とは?プロジェクト・アリストテレスを解説をご覧ください。
エドモンドソンの心理的安全性と「信頼」は同じではない
心理的安全性と信頼は近い概念ですが、まったく同じではありません。
信頼は、「この人なら約束を守ってくれる」「この人なら裏切らない」といった、相手個人との関係として考えることがあります。
一方、心理的安全性は、「このチームでは質問しても大丈夫」「この場では反対意見を言っても大丈夫」といった、チームや環境に対する認識として捉えられます。
もちろん、実際の職場では両者は強く関係します。
メンバー同士の信頼関係がなければ、本音を話すことは難しいからです。
心理的安全性は居心地の良さだけではない
心理的安全性が高い職場というと、優しく、穏やかで、誰も争わない職場を想像するかもしれません。
しかし、本当に重要なのは「必要なことを率直に言えること」です。
ときには意見が対立することもあります。
難しい問題を指摘する必要もあります。
上司に「その判断にはリスクがあります」と伝えることもあります。
こうした発言ができるからこそ、問題を早く発見し、より良い意思決定につなげられます。
エドモンドソンの研究から学べるリーダーの役割
心理的安全性をつくるうえで、リーダーの反応は大きな意味を持ちます。
リーダーが「何でも言っていい」と言っても、実際に反対意見が出た瞬間に怒れば、その言葉は信用されません。
- 仕事には不確実性があると伝える
すべてを上司が知っているわけではなく、メンバーからの情報や意見が必要だと示します。 - 発言を求める
「問題はありますか」だけでなく、「私が見落としている点はありますか」と具体的に意見を求めます。 - 発言に感謝する
不都合な情報であっても、伝えてくれたこと自体を受け止めます。 - 自分の不完全さを認める
リーダー自身が「分からない」「間違えた」と言えることで、メンバーも質問や失敗を共有しやすくなります。
「発言してください」と言うだけでは心理的安全性は高まらない
心理的安全性が低い職場で、「もっと積極的に発言してください」と社員に求めても、簡単には変わりません。
社員が発言しないのには、理由があるからです。
過去に発言して否定された。
質問して馬鹿にされた。
失敗を報告して強く叱られた。
意見を出しても何も変わらなかった。
このような経験があれば、「黙っていた方が安全」と考えるのは自然です。
必要なのは、言葉で安心を約束することではなく、「本当に発言しても大丈夫だった」という経験を積み重ねることです。
心理的安全性を高める3つの基本行動
エドモンドソンの考え方を職場で活かすときには、リーダーの行動を大きく次の3つに整理して考えると分かりやすくなります。
1 発言が必要な理由を共有する
「何でも言ってください」ではなく、なぜ意見が必要なのかを伝えます。
「私一人ではすべてのリスクを把握できません」
「現場で気づいたことを教えてください」
このように、メンバーからの発言が仕事に必要であることを明確にします。
2 積極的に意見を求める
発言を待つだけではなく、リーダーから質問します。
- 「何か問題はありますか?」
進行上の懸念やリスクを確認します。 - 「私が見落としていることはありますか?」
上司自身もすべてを把握しているわけではないことを示します。 - 「反対の立場ならどう考えますか?」
異論を意識的に引き出します。 - 「他のアイデアはありますか?」
最初に出た案だけで決めず、多様な意見を求めます。
3 発言を受け止める
勇気を出して発言した人に対し、「そんなことを言うな」と返せば、次の発言はなくなります。
たとえ採用できない意見でも、まず「言ってくれてありがとう」と受け止めることが重要です。
発言内容を採用することと、発言した行動を歓迎することは別に考えられます。
心理的安全性はチーム全員でつくる
リーダーの役割は重要ですが、心理的安全性は上司だけがつくるものではありません。
同僚の反応も大きく影響します。
- 質問した人を笑わない
一人をからかっただけでも、周囲の人が「自分も質問しない方がいい」と感じることがあります。 - 異論を最後まで聞く
自分と違う考えだからといって、途中で否定しないようにします。 - 困っている人を支援する
助けを求めたことを能力不足と捉えず、必要に応じて協力します。 - 感謝を伝える
問題提起、情報共有、サポートなど、チームのためになる行動を認めます。
エドモンドソンの研究を日本の職場でどう活かすか
研究を知ること自体が目的ではありません。
重要なのは、自分たちの職場に置き換えて考えることです。
- 何が言いにくいか確認する
質問、相談、反対意見、失敗、改善提案など、自分たちのチームで特に言いにくいものを確認します。 - 言いにくい理由を考える
過去の上司の反応、人間関係、評価制度など、背景を確認します。 - 一つの行動から改善する
会議で全員の意見を聞く、失敗報告に最初から怒らないなど、具体的な行動を決めます。 - 定期的に状態を確認する
一度改善して終わりではなく、チームの状態を継続的に確認します。
エドモンドソンの本でさらに学ぶ
エイミー・エドモンドソンの心理的安全性について、さらに詳しく学びたい場合は著書を読む方法があります。
代表的な書籍の一つが『恐れのない組織』です。
心理的安全性が、学習、イノベーション、失敗からの改善とどのように関係するのかを深く理解できます。
また、チームや組織学習をより広く学びたい場合には、『チームが機能するとはどういうことか』も参考になります。
心理的安全性のおすすめ書籍については、心理的安全性のおすすめ本で目的別に紹介しています。
知識だけでは心理的安全性はつくれない
エドモンドソンの研究を読んで「心理的安全性が重要だ」と理解しても、それだけでチームの状態が変わるわけではありません。
実際の職場では、メンバー同士の長年の関係性があります。
「あの人には言っても無駄」
「この上司には反対できない」
「あの人とは考え方が合わない」
こうした状態では、制度だけ変えても本音は出にくいでしょう。
心理的安全性を高めるには、その土台となる相互理解と信頼関係をつくることが重要です。
性格タイプ診断テストで相手との違いに気づく
心理的安全性の作り方教室では、良い関係性をつくる方法の一つとして「楽しみながら、自分と相手の違いに気づける」性格タイプ診断テストを活用しています。
人によって、大切にする価値観やコミュニケーションの取り方は異なります。
自分にとって当たり前の考え方が、相手にとっては当たり前ではありません。
この違いを知らないと、「なぜこの人はこんなことを言うのか」と相手を否定的に見てしまうことがあります。
性格タイプ診断テストを通じて、「自分と相手では重視しているものが違う」と気づくことで、相手の言動を理解しやすくなります。
その相互理解が、良い関係性と信頼関係をつくり、心理的安全性の土台につながります。
ご参考:性格タイプ診断テストの選び方
心理的安全性を研修で自分たちの職場に置き換える
心理的安全性について理論を学ぶことは重要です。
しかし、実際のチームを変えるためには、「自分たちの場合はどうか」と考える必要があります。
心理的安全性の作り方教室では、講義だけでなくグループワークを中心に研修を行います。
「自分たちのチームでは何が言いにくいのか」
「なぜ言いにくくなっているのか」
「自分自身のどの行動を変えるべきか」
参加者自身が考え、話し合うことで、心理的安全性を単なる知識ではなく、自分たちの課題として捉えられるようにします。
よくある質問
- エイミー・エドモンドソンとは誰ですか?
-
心理的安全性の研究で広く知られるハーバード・ビジネススクールの教授です。心理的安全性、チームワーク、組織学習、失敗からの学習などについて研究しており、『恐れのない組織』などの著書があります。
- 心理的安全性はエドモンドソンが提唱したのですか?
-
エドモンドソンは、職場やチームにおける心理的安全性を実証的に研究し、その重要性を広く知られるものにした代表的な研究者です。「心理的安全性という言葉そのものを最初に作った人」と単純化するより、チーム心理的安全性の研究を発展させた研究者と捉える方が正確です。
- エドモンドソンは心理的安全性をどのように定義していますか?
-
チーム内で対人関係上のリスクを取ることが安全だという共有された認識として説明されています。職場では、質問、相談、失敗の報告、異論、アイデアなどを安心して口にできる状態として理解すると分かりやすいでしょう。
- エドモンドソンとGoogleの心理的安全性はどのような関係ですか?
-
エドモンドソンはGoogleより前からチームの心理的安全性について研究しています。その後、Googleがプロジェクト・アリストテレスで効果的なチームの重要な要素として心理的安全性を取り上げたことで、ビジネスの世界にも広く知られるようになりました。
- 心理的安全性が高いと失敗が増えるのですか?
-
単純に失敗が増えるという意味ではありません。心理的安全性が高いチームでは、失敗や問題を隠さず報告しやすいため、表面上はエラー報告が多く見える場合があります。重要なのは、失敗を早く共有し、そこから学び改善することです。
- エドモンドソンの心理的安全性を職場で活かすにはどうすればよいですか?
-
まず、自分たちのチームで質問、相談、失敗の報告、反対意見などが安心してできているか確認します。そのうえで、リーダーが意見を積極的に求める、発言を受け止める、失敗を責めるだけで終わらせず学びにつなげるなど、日常の行動を改善していきます。
まとめ|エドモンドソンの研究から「言えるチーム」の重要性を学ぶ
エイミー・エドモンドソンは、心理的安全性研究を代表する研究者の一人です。
その研究から見えてくる重要なポイントは、チームの成果を考えるときに、メンバーが何を知っているかだけでなく、「必要なことを安心して言えるか」を見る必要があるということです。
質問できる。
助けを求められる。
失敗を報告できる。
反対意見を言える。
新しいアイデアを提案できる。
こうした行動ができるからこそ、チームは問題から学び、改善し、成長していくことができます。
そして心理的安全性を実際の職場で高めるためには、知識を学ぶだけでなく、メンバー同士の関係性や日常のコミュニケーションまで見直すことが重要です。
心理的安全性そのものの基本については、心理的安全性とは?をご覧ください。
職場で具体的に高める方法については、心理的安全性を高める方法もあわせてご覧ください。
心理的安全性のおすすめ本|基礎・実践・リーダー向け書籍を厳選
性格タイプ診断テストの選び方|職場の相互理解・心理的安全性に活かす方法
