心理的安全性を高める方法|職場で実践したい具体策と進め方を解説
「心理的安全性を高めるには、何から始めればいいのだろう」
「1on1やアンケートを導入したけれど、職場の雰囲気があまり変わらない」
心理的安全性の重要性を理解していても、実際に職場で高めていくとなると、具体的な進め方に迷うことがあります。
心理的安全性は、単に「何でも言っていい職場」にすることではありません。
質問、相談、提案、反対意見、失敗の報告など、仕事の成果に必要な発言を安心して行える状態をつくることが重要です。
そのためには、会議のルールや1on1といった仕組みだけでなく、その土台となる人間関係や信頼関係も含めて改善していく必要があります。
このページでは、心理的安全性を高めるための方法を、職場で取り組みやすい順番に整理して解説します。
心理的安全性を高めるには「方法」より先に現在地を知る
心理的安全性を高めようとすると、すぐに「1on1を始めよう」「アンケートをしよう」「会議のルールを変えよう」と施策を考えがちです。
しかし、その前に確認したいのが、現在のチームで何が起きているのかということです。
同じ「心理的安全性が低い職場」でも、課題はチームによって異なります。
- 質問しにくいチーム
分からないことを聞くと能力が低いと思われそうで、社員が理解できていないまま仕事を進めている可能性があります。 - 相談しにくいチーム
上司が忙しそう、助けを求めると迷惑をかけると感じ、問題を一人で抱え込んでいるかもしれません。 - 反対意見を言えないチーム
上司の考えと違う意見を出すことで評価が下がると感じ、会議では賛成意見だけが出ている可能性があります。 - 失敗を報告しにくいチーム
ミスをした人が強く責められる文化があり、問題が大きくなるまで報告されないことがあります。 - 新しい提案が出ないチーム
過去に提案を否定された経験が積み重なり、「言っても無駄」と考える社員が増えているかもしれません。
まずは、自分たちのチームで「何が言いにくいのか」「どんな行動が起きていないのか」を確認することから始めましょう。
心理的安全性を高めるための基本的な順番
心理的安全性を高める取り組みは、施策を思いついた順に行うよりも、土台から順番につくっていく方が機能しやすくなります。
心理的安全性の作り方教室では、強いチームづくりを次の流れで考えます。
| STEP1 | 共通の価値観や危機感を共有する 自分たちが何を大切にし、なぜ今チームを変える必要があるのかを共有します。目的が分からないまま施策だけ導入しても、形だけになりやすいためです。 |
|---|---|
| STEP2 | 良い関係性と信頼関係をつくる メンバー同士が価値観や考え方の違いを理解し、「この人には安心して話せる」という関係を育てます。 |
| STEP3 | 目的・ビジョンを共有する チームがどこを目指しているのかを明確にします。仲が良いだけではなく、成果に向かうための共通目標を持つことが重要です。 |
| STEP4 | 心理的安全性の高いチームをつくる 質問、相談、異論、提案、失敗の共有などを安心して行える状態をつくります。 |
| STEP5 | 継続して振り返り、仕組みにする 一度の研修やイベントで終わらせず、定期的な確認と改善を続けます。 |
方法1 メンバー同士の相互理解を深める
心理的安全性を高めるうえで、最も土台になるのがメンバー同士の関係性です。
人は、自分と違う考え方をする相手に対して、無意識に「なぜそんな考え方をするのだろう」「普通はこうするはずだ」と感じます。
しかし、何を大切にするか、どのように考えるか、どのような伝え方を好むかは人によって異なります。
- 価値観の違いを知る
成果を最優先する人もいれば、周囲との調和を重視する人もいます。どちらが正しいではなく、違いとして理解することが重要です。 - コミュニケーションの違いを知る
結論から話してほしい人もいれば、背景から順に説明してほしい人もいます。相手に合った伝え方を考えることで、すれ違いを減らせます。 - 相手の意図を確認する
自分の解釈だけで判断せず、「どういう意味で言ったのか」「なぜそう考えたのか」を聞く習慣をつくります。
お互いの違いを理解できるようになると、意見が違っても相手そのものを否定しにくくなります。
方法2 会議で全員が発言できる仕組みをつくる
心理的安全性は、日常の会議に表れやすいものです。
一部の人だけが話し、他のメンバーが黙っている会議が続いている場合は、発言方法を見直してみましょう。
- 一人ずつ意見を聞く
「何かありますか」と全体に聞くだけでは、発言する人が固定されやすくなります。一人ずつ順番に意見を聞くことで、発言の機会を均等にできます。 - 上司は最後に意見を言う
上司が最初に結論を示すと、部下がその意見に引っ張られやすくなります。先にメンバーの意見を聞くことで、多様な考えが出やすくなります。 - 反対意見を歓迎する
異論が出たときに不機嫌にならず、「別の視点を出してくれてありがとう」と受け止めます。 - 否定する前に質問する
「それは無理」で終わらせるのではなく、「そう考えた理由をもう少し教えてください」と背景を確認します。
方法3 定期的な1on1を行う
1on1は、心理的安全性を高める方法の一つです。
ただし、単なる業務報告の時間になってしまうと十分な効果は期待できません。
重要なのは、部下が安心して考えや困りごとを話せる時間にすることです。
- 短時間でも定期的に行う
問題が起きたときだけ話すのではなく、毎週15~30分、または月1回60分など、継続して話せる機会をつくります。 - 部下が話す時間を増やす
上司が説明や指示を続けるのではなく、「最近気になっていることは?」「困っている仕事はある?」と質問します。 - すぐ答えを与えない
部下が相談した瞬間に解決策を指示するのではなく、「あなたはどう考えている?」と本人の考えを引き出します。 - 話した内容を不用意に否定しない
「そんなことで悩んでいるの?」という反応は、次の相談を止める原因になります。まずは受け止めることが大切です。
方法4 助けを求めやすい職場をつくる
心理的安全性が低い職場では、「助けてください」と言うこと自体が難しくなります。
助けを求めると、仕事ができないと思われるのではないかという不安があるからです。
- 上司から困りごとを聞く
「何か困っている?」だけでなく、「今一番時間がかかっている仕事は?」「誰かに手伝ってもらえるとしたら何?」と具体的に聞きます。 - 上司自身も助けを求める
「この分野は詳しくないから教えてください」と伝えることで、助けを求めることは恥ずかしいことではないと示せます。 - 助けた行動を評価する
自分の成果だけでなく、同僚のサポートや情報共有なども評価することで、助け合う文化を育てます。
方法5 失敗を責めるのではなく振り返る
失敗が起きたときの反応は、チームの心理的安全性に大きな影響を与えます。
報告した瞬間に強く叱られる職場では、次から失敗を隠したくなるのは自然です。
大切なのは、失敗を無責任に許すことではありません。
責任を持って振り返り、次の改善につなげることです。
- 最初に事実を確認する
誰が悪いかを決める前に、何が起きたのか、どのような影響があるのかを整理します。 - 早く報告した行動を認める
「早く知らせてくれて助かった」と伝えることで、問題を隠さず共有する行動を促します。 - 原因を個人だけに求めない
手順、業務量、確認方法、情報共有など、仕組みに改善できる部分がないかも確認します。 - 次の行動を決める
「気をつけます」で終わらせず、具体的に何を変えるかを決めます。
方法6 感謝と承認を日常的に伝える
心理的安全性というと「問題を言えること」に注目しがちですが、普段の肯定的なコミュニケーションも大切です。
いつも注意されるだけの関係と、日頃から感謝や承認がある関係では、厳しい指摘を受けたときの受け止め方も変わります。
- 具体的に感謝する
「ありがとう」だけでなく、「早めに報告してくれたので対応できた」など、何が助かったのかまで伝えます。 - 結果以外の行動も認める
提案した、助けた、質問した、問題を共有したといった行動も認めます。 - メンバー同士でも伝える
上司から部下だけではなく、同僚同士で感謝を伝える習慣をつくります。
方法7 新しい挑戦を小さく始められるようにする
心理的安全性が低い職場では、「失敗するくらいなら何もしない方がいい」という空気が生まれることがあります。
その状態では、改善や新しいアイデアが生まれにくくなります。
- 小さく試す
最初から会社全体を変えるのではなく、一部のチームや短い期間で試します。失敗時の影響を小さくすることで挑戦しやすくなります。 - 仮説を持って挑戦する
思いつきで行動するのではなく、「こうすればこう変わるのではないか」という仮説を持って試します。 - 結果より学びも確認する
成功したか失敗したかだけではなく、何が分かったのか、次はどうするのかを振り返ります。
方法8 心理的安全性を定期的に確認する
一度改善したからといって、その状態が永久に続くわけではありません。
上司の交代、新しいメンバーの加入、繁忙期など、チームの状況が変われば心理的安全性も変化します。
そのため、定期的に状態を確認することが重要です。
- 同じ観点で継続的に確認する
毎月など一定のタイミングで確認することで、チームの変化を把握しやすくなります。 - 点数だけで評価しない
「80点だから問題ない」と判断するのではなく、なぜその回答になったのかを話し合います。 - 改善テーマを一つ決める
低い項目をすべて一度に直そうとせず、今月取り組むテーマを一つ決めます。
方法9 上司・リーダーが自分の行動を変える
心理的安全性はチーム全員でつくるものですが、リーダーの反応は特に大きな影響を与えます。
部下は、上司が何を言っているか以上に、「実際にどう反応したか」を見ています。
- 分からないことを認める
リーダーが「分からないので教えてほしい」と言うことで、質問することへの不安を減らせます。 - 自分の失敗を話す
過去の失敗と、そこから学んだことを共有することで、失敗を隠す必要がないと伝えられます。 - 反対意見を求める
「この案の問題点はありますか」「違う考えの人はいませんか」と、異論を意識的に求めます。 - 感情的な反応を減らす
不都合な報告を受けた瞬間に強い口調で責めると、次回から情報が上がってこなくなる可能性があります。
方法10 メンバー一人ひとりも心理的安全性をつくる
「心理的安全性は上司の仕事」と考えると、組織全体の改善は進みにくくなります。
同僚の反応も、発言のしやすさに影響するからです。
- 人の発言を笑わない
一人の質問をからかっただけでも、それを見ていた他のメンバーが「自分も言わない方がいい」と感じることがあります。 - 最後まで話を聞く
意見が違っても途中で遮らず、相手が何を伝えようとしているのかを確認します。 - 違いをすぐ否定しない
「自分ならそうしない」と感じても、相手には別の価値観や背景があるかもしれません。 - 自分から相談する
助けを求める行動を自分から示すことも、周囲が相談しやすい雰囲気につながります。
心理的安全性を高める取り組みがうまくいかない理由
施策を行っているのに、なかなか心理的安全性が高まらない場合があります。
そのときは、次のような状態になっていないか確認してみましょう。
- 施策を実施することが目的になっている
1on1を「月1回実施した」という事実だけを管理し、どのような対話が行われたかを見ていないケースです。 - 関係性をつくらず本音だけ求めている
信頼できない相手から「本音を話してください」と言われても、安心して話すことはできません。 - 上司の言動が変わっていない
会社が心理的安全性を掲げても、現場の上司が反対意見や失敗に感情的に反応していれば、社員はそちらを信じます。 - 短期間で結果を求めている
人間関係や文化は、一度の研修や数週間の取り組みだけでは変わらないことがあります。 - 心理的安全性を「優しくすること」と勘違いしている
必要な指摘まで避けると、単に問題を言わない職場になってしまいます。
心理的安全性と「ぬるま湯」の違いについては、心理的安全性は「ぬるま湯」ではない|よくある勘違い・誤解でも詳しく解説しています。
心理的安全性は「高める施策」だけではなく「関係性」で決まる
ここまで、心理的安全性を高める具体的な方法を紹介してきました。
しかし、どの施策にも共通する重要な前提があります。
それが、メンバー同士の良い関係性です。
相手を信用していない状態では、会議のルールを変えても本音は出にくくなります。
お互いの価値観を理解していない状態では、相手の意見を「わがまま」「やる気がない」「仕事が遅い」などと誤解してしまうことがあります。
そのため、心理的安全性を高める前に、まず相互理解を深めることが重要です。
性格タイプ診断テストで「自分と相手の違い」に気づく
心理的安全性の作り方教室では、相互理解を深めるための方法として「楽しみながら、自分と相手の違いに気づける」性格タイプ診断テストを活用しています。
人は、自分の価値観を基準にして相手を見る傾向があります。
「どうしてすぐ決めないのか」
「なぜそんな言い方をするのか」
「なぜもっと周囲に相談しないのか」
こうした違いを単に性格や能力の問題と考えると、人間関係の摩擦につながります。
性格タイプ診断テストを使って、自分と相手が何を大切にしやすいのかを知ることで、「だからこの人はこう考えるのか」という気づきが生まれます。
この気づきが、相手への伝え方や受け止め方を変えるきっかけになります。
心理的安全性を高めるためには、テクニックを覚えるだけではなく、違いを理解しようとする姿勢を育てることが大切です。
ご参考:性格タイプ診断テストの選び方
心理的安全性を研修で高めるという方法
社内だけで心理的安全性を改善しようとしても、普段の人間関係の中では本音を言いにくいことがあります。
その場合、第三者の講師を交えた研修を活用する方法もあります。
心理的安全性の作り方教室では、講義だけではなくグループワークを中心に研修を行います。
「自分たちのチームでは何が言いにくいのか」
「なぜ心理的安全性が低くなっているのか」
「明日から自分たちは何を変えるのか」
こうしたテーマについて自分たちで考えることで、単に知識を覚えるのではなく、自分たちの課題に気づくことを重視します。
よくある質問
- 心理的安全性を高めるには、まず何をすればいいですか?
-
まず現在のチームで、質問、相談、反対意見、失敗の報告などがどの程度安心してできているかを確認することをおすすめします。課題を把握したうえで、相互理解、会議、1on1、失敗時の対応など、必要な部分から改善していくことが大切です。
- 心理的安全性を高める具体的な方法には何がありますか?
-
メンバー同士の相互理解、会議で全員が発言する仕組み、定期的な1on1、助けを求めやすい環境づくり、失敗を責めない振り返り、感謝や承認、挑戦を支援する仕組み、定期的な診断などがあります。
- 心理的安全性はどのくらいで高まりますか?
-
チームの状態によって異なります。心理的安全性は一度の施策ですぐ完成するものではなく、「発言しても大丈夫だった」「相談しても受け止めてもらえた」という経験を積み重ねながら育っていきます。短期間の結果だけでなく、継続的に改善することが重要です。
- 1on1をすれば心理的安全性は高まりますか?
-
1on1は有効な方法の一つですが、実施するだけでは十分ではありません。上司が一方的に話す業務報告ではなく、部下が安心して相談や意見を話せる時間にする必要があります。また、普段の上司と部下の関係性も重要です。
- 心理的安全性を高めると職場が甘くなりませんか?
-
心理的安全性は、何をしても許される状態を意味しません。必要な指摘やフィードバックを行いながら、質問、相談、提案、失敗の報告などを安心して行える職場を目指します。成果への責任と心理的安全性は両立できます。
- 心理的安全性を高めるのは上司の役割ですか?
-
上司やリーダーの影響は大きいですが、心理的安全性はメンバー全員でつくるものです。同僚の意見を最後まで聞く、質問した人を馬鹿にしない、困っている人を助けるなど、一人ひとりの行動もチームの心理的安全性に影響します。
まとめ|心理的安全性は一つの施策ではなく、チーム全体で高めていく
心理的安全性を高める方法は、一つではありません。
相互理解を深める。
会議で発言しやすくする。
1on1を行う。
助けを求めやすくする。
失敗を学びに変える。
感謝や承認を伝える。
挑戦しやすい環境をつくる。
定期的に状態を確認する。
こうした行動を、自分たちの課題に合わせて継続していくことが重要です。
そして、すべての取り組みを支える土台になるのが、メンバー同士の相互理解と信頼関係です。
まずは現在のチームを振り返り、「何が言いにくいのか」「なぜ言いにくいのか」を確認するところから始めてみましょう。
実際の職場で行われる取り組みの具体例を知りたい方は、心理的安全性の取り組み事例もあわせてご覧ください。
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