心理的安全性の取り組み事例|職場・チームで実践できる改善策を紹介
「心理的安全性を高めたいけれど、具体的に何をすればよいのか分からない」
「他の職場では、どのような取り組みをしているのだろう」
心理的安全性という言葉を知っていても、実際の職場でどう行動に落とし込めばよいのか迷う企業やリーダーは少なくありません。
心理的安全性は、社内にスローガンを掲げたり、「何でも自由に発言してください」と呼びかけたりするだけで高まるものではありません。
会議、1on1、日常の声かけ、失敗したときの対応、上司と部下の関係性など、普段の仕事の中にある小さな行動を変えていくことが重要です。
このページでは、職場で起こりやすい課題をもとに、心理的安全性を高めるための取り組み事例を紹介します。
自社の状況と照らし合わせながら、「自分たちなら何から始められるか」を考えてみてください。
心理的安全性の取り組みは「制度」より日常の行動が重要
心理的安全性を高めるために、新しい制度を導入しなければならないと思われることがあります。
もちろん、1on1やアンケート、研修などの仕組みは有効です。
しかし、どれだけ立派な制度を導入しても、日常のコミュニケーションが変わらなければ心理的安全性は高まりません。
たとえば、月に一度1on1を行っていても、普段から部下の意見を否定している上司に対して、本音を話すことは難しいでしょう。
「失敗を恐れず挑戦しよう」と会社が掲げていても、実際に失敗した社員が強く責められていれば、誰も挑戦しなくなります。
心理的安全性は、制度そのものではなく、その制度をどのように運用するかによって大きく変わります。
取り組み事例1 会議で発言する人が偏っている職場
会議を開いても、発言するのは上司と一部の社員だけ。
「何か意見はありますか」と聞いても、誰も手を挙げず、そのまま会議が終わってしまう。
このような職場は珍しくありません。
発言が少ないからといって、メンバーが何も考えていないとは限りません。
「上司の意見と違ったら気まずい」「的外れだと思われたくない」「発言しても結局採用されない」と考えている可能性があります。
取り組み
- 全員が一度は発言する仕組みをつくる
発言力の強い人だけで会議が進まないよう、一人ずつ順番に意見を聞きます。いきなり長い発言を求めず、「気になっていることを一つ」程度から始めると参加しやすくなります。 - 上司が最初に結論を言わない
上司が最初に「私はA案がいいと思う」と言うと、その後のメンバーが反対意見を出しにくくなることがあります。まずメンバーの意見を聞いてから、最後に上司が考えを伝える方法も有効です。 - 反対意見を歓迎する
異論が出たときにすぐ否定せず、「別の視点を出してくれてありがとう」「その考えをもう少し聞かせてください」と受け止めます。
期待できる変化
会議で発言する人が増えると、これまで表に出ていなかった問題やアイデアが見えやすくなります。
また、「言っても大丈夫だった」という経験が積み重なることで、次の会議でも発言しやすくなります。
取り組み事例2 ミスや問題の報告が遅い職場
問題が発生していたにもかかわらず、上司が知ったのはかなり時間が経ってから。
「なぜもっと早く報告しなかったんだ」と叱った経験がある方もいるかもしれません。
しかし、報告が遅れる背景には、過去の上司の反応が影響していることがあります。
ミスを報告するたびに強く叱られる職場では、社員は「できるだけ自分で何とかしてから報告しよう」と考えるようになります。
その結果、小さな問題が大きくなってから表面化することがあります。
取り組み
- 報告された直後は状況把握を優先する
最初から「誰が悪い」「なぜこんなことをした」と責めるのではなく、まず何が起きているのか、どこまで影響しているのかを確認します。 - 早く報告したことを評価する
「早く知らせてくれて助かった」と伝えることで、問題を隠さず共有する行動を促します。 - 原因と再発防止をチームで考える
個人の責任だけを追及するのではなく、手順や確認方法、情報共有など、仕組みに改善できる部分がないかを考えます。
期待できる変化
ミスや問題が早い段階で共有されるようになれば、トラブルが大きくなる前に対処しやすくなります。
心理的安全性を高めることは、失敗を許すことではなく、失敗を早く表に出して改善できるチームをつくることでもあります。
取り組み事例3 部下がなかなか相談してこない職場
上司から見ると、「困っているならもっと早く相談してくれればいいのに」と感じることがあります。
しかし部下側では、「忙しそうだから声をかけにくい」「こんなことで相談したら能力が低いと思われる」と感じているかもしれません。
相談を待つだけではなく、相談しやすい環境をつくる必要があります。
取り組み
- 定期的に1on1を行う
困ったときだけ相談するのではなく、定期的に話す時間をつくります。15分程度の短い時間でも、継続することで相談のハードルを下げやすくなります。 - 「何か困っている?」だけで終わらせない
「今一番時間がかかっている仕事は?」「誰かに手伝ってほしいことはある?」など、具体的な質問をすると話しやすくなります。 - 上司自身も助けを求める
上司が「ここは詳しくないから教えてほしい」「この部分を手伝ってほしい」と言うことで、助けを求めることは悪いことではないと示せます。
期待できる変化
小さな悩みの段階で相談できるようになると、仕事を一人で抱え込むことが減ります。
また、上司と部下の間で継続的な対話が増えることで、信頼関係を築くきっかけにもなります。
取り組み事例4 新しいアイデアが出ない職場
「もっと新しいアイデアを出してほしい」と経営者や管理職が考えていても、社員から提案が出てこないことがあります。
その原因の一つとして、「提案しても否定される」という経験が積み重なっている可能性があります。
新しいアイデアは、最初から完璧とは限りません。
未完成な意見を安心して出せることが、改善や革新の出発点になります。
取り組み
- アイデアを最初から評価しすぎない
提案された瞬間に「予算がない」「前にも失敗した」と否定するのではなく、まず内容を理解します。 - 小さく試す
すべてを一度に変更するのではなく、限られた部署や期間で試してみます。小さな実験なら挑戦への心理的な負担を減らせます。 - 採用されなかった意見にも感謝する
提案が採用されなかった場合でも、「考えてくれてありがとう」と伝えることで、次の提案を止めないようにします。
期待できる変化
「完璧でなくても言っていい」という雰囲気ができると、改善提案が増えやすくなります。
結果的に採用される案が少なくても、意見を出し合うこと自体がチームの学習につながります。
取り組み事例5 失敗を恐れて挑戦しない職場
以前は新しいことに取り組んでいたのに、最近は誰も挑戦しなくなった。
このようなチームでは、過去の失敗への対応を振り返る必要があります。
失敗した人が長期間責められたり、その失敗だけで評価を下げられたりすると、周囲の社員も「余計なことはしない方がいい」と学習します。
取り組み
- 失敗の振り返りミーティングを行う
誰を責めるかではなく、「何を想定していたのか」「実際には何が起きたのか」「次にどうするか」を整理します。 - 挑戦の目的を確認する
無計画な失敗まで肯定するのではなく、なぜその挑戦をしたのか、どのような仮説があったのかを振り返ります。 - 失敗から得られた学びを共有する
うまくいかなかった事例も、社内にとって有益な知識になります。個人だけの経験で終わらせず、チームの学びに変えます。
期待できる変化
失敗した瞬間に評価が終わるのではなく、学びにつながる経験として扱われるようになると、必要な挑戦をしやすくなります。
取り組み事例6 感謝や承認が少ない職場
仕事をしても「できて当たり前」、問題があったときだけ指摘される。
このような職場では、社員同士の関係が徐々に冷えていくことがあります。
感謝や承認は、心理的安全性を高める土台となる関係性づくりに役立ちます。
取り組み
- 感謝を具体的に伝える
単に「ありがとう」と言うだけではなく、「資料を早く準備してくれたので会議がスムーズに進んだ」など、何が助かったのかまで伝えます。 - 結果だけでなく行動も認める
成果が出たときだけではなく、周囲を支援した、問題を早く報告した、改善案を出したなどの行動も認めます。 - メンバー同士でも感謝を伝える
上司から部下だけではなく、同僚同士で感謝を伝える習慣をつくります。
期待できる変化
自分の行動が周囲に役立っていると感じられると、チームへの参加意識が高まりやすくなります。
また、普段から肯定的なコミュニケーションがあることで、必要な指摘や意見の違いも受け止めやすくなります。
取り組み事例7 チーム内の人間関係が悪い職場
心理的安全性を高める施策を行っても、そもそもメンバー同士の関係が悪ければ、うまく機能しないことがあります。
特に多いのが、「相手の価値観が理解できない」という状態です。
自分なら気にならないことに相手が強く反応する。
自分ならすぐ決断する場面で、相手は時間をかけて考える。
こうした違いを「性格が悪い」「仕事ができない」と判断すると、関係はさらに悪化します。
取り組み
- お互いの価値観を知る機会をつくる
仕事の進め方、何を大切にしているか、どのようなコミュニケーションが得意かなどを共有します。 - 違いを良し悪しで判断しない
自分と違う考え方を「間違い」と捉えるのではなく、それぞれの特徴として理解します。 - 相手に合った伝え方を考える
自分が伝えやすい方法ではなく、相手が理解しやすい伝え方を意識します。
期待できる変化
「なぜあの人はそうするのか」が少し理解できるだけでも、人間関係のストレスは変わります。
相互理解が進むことで、質問、相談、意見交換もしやすくなります。
取り組み事例8 心理的安全性アンケートを定期的に実施する
心理的安全性は目に見えにくいため、定期的に現在の状態を確認することも有効です。
ただし、アンケートを実施するだけでは職場は変わりません。
結果をもとに対話し、改善につなげることが重要です。
取り組み
- 定期的に状態を確認する
月1回など一定のタイミングでチェックすることで、チームの変化を確認しやすくなります。 - 点数ではなく理由を考える
「70点だから大丈夫」で終わらせず、どの質問の評価が低かったのか、その背景には何があるのかを話し合います。 - 改善するテーマを一つ決める
一度にすべてを変えようとせず、「今月は会議で全員の意見を聞く」など、具体的な行動を決めます。
期待できる変化
定期的に振り返ることで、「心理的安全性を高めよう」という掛け声だけで終わらず、継続的な改善につなげやすくなります。
現在の状態を確認したい方は、無料診断もご活用ください。
取り組み事例9 1on1を「報告会」にしない
心理的安全性を高めるために1on1を導入している企業も増えています。
しかし、実際には上司から部下への進捗確認だけで終わり、「普通の業務報告と何が違うのか」という状態になっていることがあります。
取り組み
- 部下が話す時間を増やす
上司が一方的に話すのではなく、部下が最近感じていることや困っていることを話す時間にします。 - すぐに答えを教えない
相談されたらすぐ解決策を指示するのではなく、「あなたはどうしたいと思う?」と考えを聞くことで対話を深めます。 - 評価面談と分けて考える
すべての発言が人事評価に直結すると感じれば、本音を話しにくくなります。1on1の目的を明確に伝えることが重要です。
期待できる変化
定期的に安心して話せる時間ができることで、大きな問題になる前に小さな違和感や悩みを共有しやすくなります。
取り組み事例10 リーダーが自分の弱さを見せる
リーダーは部下よりも知識があり、何でも答えられなければならない。
そう考えている管理職は少なくありません。
しかし、上司が常に完璧な人物として振る舞うと、部下も「分からないと言ってはいけない」と感じることがあります。
取り組み
- 分からないことを認める
「その分野は詳しくないから教えてほしい」と言うことで、質問することは恥ずかしいことではないと示せます。 - 自分の失敗も共有する
過去の失敗と、そこから何を学んだのかを伝えることで、失敗を隠さず話せる雰囲気をつくります。 - 自分の判断への意見を求める
「この案で抜けているところはない?」「反対意見があれば聞きたい」と伝え、異論を歓迎します。
期待できる変化
リーダー自身が完璧でなくてもよいと示すことで、メンバーも質問や相談をしやすくなります。
これは、チームの話しやすさを高めるうえで大きな意味を持ちます。
心理的安全性の取り組みに失敗する職場の共通点
さまざまな取り組みを導入しても、心理的安全性がなかなか高まらないケースがあります。
その場合、方法そのものではなく、取り組み方に問題がないかを確認してみましょう。
- 施策を実施することが目的になっている
「1on1を月1回実施する」「アンケートを取る」ことだけが目標になり、本来の目的である対話や関係改善が置き去りになっているケースがあります。 - 管理職だけに責任を押しつけている
リーダーの役割は大きいものの、心理的安全性はメンバー全員の関係性からつくられます。 - 社員に本音を求めすぎる
信頼関係ができていない段階で「何でも本音で話してください」と求めても、かえってプレッシャーになることがあります。 - 結果を急ぎすぎる
人間関係や組織文化は短期間では変わりません。小さな行動を継続し、「言っても大丈夫だった」という経験を増やすことが重要です。 - 関係性をつくらずテクニックだけ導入する
会議ルールや1on1などの方法だけを取り入れても、お互いへの理解や信頼がなければ形式化する可能性があります。
心理的安全性を高める5つのSTEP
心理的安全性の作り方教室では、心理的安全性だけを単独で高めようとするのではなく、強いチームづくり全体の中で考えることを大切にしています。
| STEP1 | 共通の価値観・同一の危機感をつくる 自分たちが何を大切にし、どのような課題に向き合うチームなのかを共有します。 |
|---|---|
| STEP2 | 良い関係性・信頼関係をつくる お互いの価値観や考え方の違いを理解し、「この人になら安心して話せる」という関係を育てます。 |
| STEP3 | 目的・ビジョンを共有する チームが何を目指しているのか、何のために仕事をしているのかを確認します。 |
| STEP4 | 心理的安全性の高いチームをつくる 質問、相談、異論、提案、失敗の共有など、成果につながる発言を安心してできる環境を整えます。 |
| STEP | 継続的に学び、仕組み化する 一度の研修で終わらせず、アンケートや振り返りを活用しながら改善を続けます。 |
「何をするか」の前に「なぜできないか」を考える
心理的安全性を高めようとすると、「1on1を導入しよう」「アンケートをしよう」「会議ルールをつくろう」と方法から考えがちです。
しかし、それより先に考えたいのが、「なぜ今、必要な行動ができていないのか」です。
なぜ部下は相談しないのか。
なぜ会議で意見を言わないのか。
なぜミスを隠すのか。
なぜ新しい提案が出ないのか。
その背景を理解せずに制度だけ変えても、同じ問題が形を変えて残る可能性があります。
心理的安全性を高める取り組みでは、目に見える行動だけでなく、その行動を生み出している人間関係や価値観まで見ることが大切です。
性格タイプ診断テストを使って相互理解から始める
心理的安全性の作り方教室では、良い関係性をつくる方法の一つとして「楽しみながら、自分と相手の違いに気づける」性格タイプ診断テストを活用しています。
人によって、大切にする価値観やコミュニケーションの特徴は異なります。
自分では普通に伝えたつもりでも、相手には強く感じられる。
自分では十分に説明したつもりでも、相手には結論が分かりにくい。
このような違いを知らないままでは、悪意がなくてもすれ違いが起こります。
「自分と相手は違う」ということを分かりやすく理解できると、相手の言動をすぐ否定するのではなく、「この人はなぜそう考えるのだろう」と捉えられるようになります。
この相互理解が、良い関係性や信頼関係をつくり、心理的安全性を高める土台になります。
ご参考:性格タイプ診断テストの選び方
心理的安全性の取り組みを研修で実践する
心理的安全性について知識を学ぶだけでは、実際の職場の行動はなかなか変わりません。
そのため、心理的安全性の作り方教室の研修では、グループワークを中心に、自分たちのチームについて考えます。
「自分たちの職場ではどのようなことが言いにくいのか」
「心理的安全性を下げている行動は何か」
「明日から何を変えればよいのか」
こうした問いについてメンバー自身が話し合うことで、単なる知識ではなく「自分たちの課題」として心理的安全性を考えられるようになります。
大切なのは「学んだ」だけで終わらず、「気づいた」「行動を変えてみよう」につなげることです。
よくある質問
- 心理的安全性を高める取り組みには何がありますか?
-
1on1、会議で全員が発言する仕組み、失敗を責めない振り返り、感謝や承認を伝える習慣、心理的安全性アンケートなどがあります。ただし、施策を導入するだけではなく、普段のコミュニケーションや信頼関係を改善することが重要です。
- 心理的安全性を高めるために、まず何から始めればよいですか?
-
まず現在のチームで、質問、相談、失敗の報告、反対意見などがどの程度安心して行えるかを確認することをおすすめします。そのうえで、自分たちの課題に合わせて取り組みを一つずつ始めます。
- 1on1を導入すれば心理的安全性は高まりますか?
-
1on1は有効な方法の一つですが、実施するだけで心理的安全性が高まるわけではありません。上司が一方的に話す業務報告の時間ではなく、部下が安心して相談や意見を話せる対話の時間として運用することが大切です。
- 心理的安全性のアンケートはどのくらいの頻度で実施すればよいですか?
-
チームの状況によりますが、定期的に同じ観点で確認することが重要です。たとえば月1回など一定の頻度で確認し、その結果をもとに改善テーマを話し合う方法があります。点数だけを見るのではなく、なぜその結果になったのかを考えることが大切です。
- 心理的安全性を高める取り組みが失敗する原因は何ですか?
-
制度や方法だけを導入し、メンバー同士の関係性や信頼関係が変わっていないことが原因になる場合があります。また、短期間で結果を求めたり、管理職だけに責任を負わせたりすると、取り組みが形骸化しやすくなります。
- 心理的安全性を高める取り組みは管理職だけが行うものですか?
-
管理職の言動は大きな影響を与えますが、心理的安全性はチーム全員でつくるものです。同僚の意見を最後まで聞く、質問した人を馬鹿にしない、困っている人を助ける、感謝を伝えるなど、メンバー一人ひとりの行動も重要です。
まとめ|心理的安全性の取り組みは小さな行動から始める
心理的安全性を高めるために、特別な制度を一度にたくさん導入する必要はありません。
会議で全員の意見を聞く。
ミスを報告してくれたことに感謝する。
困っている人に声をかける。
上司自身が「分からない」と言う。
相手の違う意見をすぐ否定せず、理由を聞く。
こうした小さな行動の積み重ねが、「ここでは言っても大丈夫」「相談しても大丈夫」という経験につながります。
そして、さまざまな施策を機能させる土台になるのが、メンバー同士の良い関係性と信頼関係です。
他社の取り組みをそのまま真似するのではなく、自分たちのチームでは何が課題なのかを確認し、必要なところから改善していきましょう。
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