心理的安全性の4つの因子とは?4つの不安と高める方法をわかりやすく解説
心理的安全性について調べていると、「4つの因子」や「4つの不安」という言葉を目にすることがあります。
どちらも心理的安全性を理解するうえで役立つ考え方ですが、同じものではありません。
心理的安全性の4つの因子は、職場やチームで心理的安全性がどのような状態として表れるのかを整理する視点です。
一方、4つの不安は、人が職場で発言や行動をためらってしまう心理的な背景を理解するための考え方です。
この2つを合わせて考えると、「心理的安全性が低いとは、具体的にどのような状態なのか」「何を改善すればよいのか」が見えやすくなります。
このページでは、心理的安全性の4つの因子と4つの不安について、職場での具体例を交えながらわかりやすく解説します。
心理的安全性の4つの因子とは
日本の職場で心理的安全性を考える際には、心理的安全性を次の4つの因子に分けて捉える考え方があります。
- 話しやすさ
疑問、意見、違和感、ミスなどを必要なときに安心して口にできる状態です。上司や周囲の反応を過度に恐れず、仕事に必要な情報を共有できることが重要です。 - 助け合い
困ったときに「助けてほしい」と言えるだけでなく、周囲も自然に支援できる状態です。問題を一人で抱え込ませず、チームとして解決しようとする関係性が求められます。 - 挑戦
失敗する可能性があっても、新しい方法や改善案に挑戦できる状態です。失敗そのものを責めるのではなく、そこから何を学ぶかを重視します。 - 新奇歓迎
人と違う意見や個性、新しい視点を受け入れられる状態です。これまでと異なる考え方をすぐに否定せず、チームにとって新しい可能性として受け止めます。
この4つの因子を見ると、心理的安全性は単に「話しやすい職場」を意味するものではないことが分かります。
相談できること、助け合えること、挑戦できること、異なる意見を受け入れられることまで含めて考える必要があります。
4つの因子①「話しやすさ」
心理的安全性を考えるうえで、まず分かりやすいのが「話しやすさ」です。
ただし、ここでいう話しやすさは、雑談が多いことや職場の雰囲気が明るいことだけを意味しません。
仕事上、本当に必要なことを言えるかどうかが重要です。
- 分からないことを質問できる
「そんなことも知らないのか」と思われる心配をせず、理解できていないことを確認できます。 - 問題を早く報告できる
ミスやトラブルが起きたとき、責められることを恐れて隠すのではなく、早い段階で共有できます。 - 反対意見を伝えられる
上司や多数派と違う考えであっても、仕事のために必要であれば自分の意見を伝えられます。 - 違和感を口にできる
「何となくおかしい」と感じた段階でも、その感覚をチームに共有できます。
話しやすさが低い職場では、会議で誰も反対意見を言わず、一見するとまとまっているように見えることがあります。
しかし、その裏で「言っても無駄」「反対すると面倒」「黙っていた方が安全」と考える人が増えている可能性があります。
4つの因子②「助け合い」
心理的安全性の高いチームでは、困ったときに助けを求めることができます。
仕事で分からないことや、自分一人では解決できない問題が起きたとき、「こんなことを聞いたら能力が低いと思われる」と感じる職場では、問題を抱え込みやすくなります。
助け合いがあるチームでは、自分の弱さや困りごとを隠す必要がありません。
- 早い段階で相談できる
問題が深刻になる前に、「少し困っています」と周囲に相談できます。早期共有によって、トラブルの拡大を防ぎやすくなります。 - 得意分野を補い合える
一人ですべてを解決しようとせず、それぞれの強みを活かして協力できます。 - 忙しい人にも声をかけられる
相手の状況を気にしすぎて何も言えなくなるのではなく、必要な相談をしたうえで優先順位を一緒に考えられます。 - 助けを求めても評価が下がらない
相談することを「能力不足」と捉えず、適切に周囲を頼ることも仕事の一部として受け止めます。
助け合いが機能するチームでは、「誰か一人が頑張る」のではなく、チーム全体で成果を出すという意識が育ちやすくなります。
4つの因子③「挑戦」
新しいことに挑戦すると、必ずしも成功するとは限りません。
そのため、失敗した人が強く責められる職場では、「余計なことをしない方がいい」という空気が生まれます。
心理的安全性における「挑戦」とは、失敗しても何でも許されるという意味ではありません。
適切に考え、必要な準備をしたうえで、新しい方法を試すことが認められる状態です。
- 改善案を提案できる
これまでの方法に疑問を感じたとき、「昔からこうだから」で終わらせず、新しいやり方を提案できます。 - 試してみることができる
完璧な保証がなくても、小さく試しながら改善していくことができます。 - 失敗を共有できる
失敗を隠すのではなく、何が起きたのかを共有し、次の改善につなげます。 - 挑戦したこと自体も評価される
結果だけではなく、目的を持って新しい行動を取ったことや、その過程で得た学びも評価されます。
挑戦が少ない職場では、誰も大きな失敗をしない代わりに、新しいアイデアや改善も生まれにくくなることがあります。
4つの因子④「新奇歓迎」
「新奇歓迎」という言葉は、少し分かりにくく感じるかもしれません。
簡単に言えば、これまでと違う考え方、人と違う意見、新しい視点を歓迎することです。
チームには、それぞれ異なる経験、価値観、得意分野があります。
その違いを「面倒なもの」と考えるか、「新しい可能性」と考えるかによって、チームの心理的安全性は変わります。
- 少数意見をすぐに否定しない
多数派と違う意見が出たとき、「それは違う」とすぐに結論づけず、なぜそう考えたのかを確認します。 - 新しく入った人の意見を聞く
新人だから分かっていないと決めつけず、外から見たからこそ気づける違和感や改善点を活かします。 - 価値観の違いを受け止める
自分と違う考え方を「間違い」と判断するのではなく、その背景や理由を理解しようとします。 - 個性を活かす
全員を同じタイプに合わせるのではなく、それぞれの強みや特徴をチームの成果につなげます。
新奇歓迎ができるチームでは、異なる意見が出ることそのものを問題とは考えません。
むしろ、違いがあるからこそ新しいアイデアや改善が生まれると捉えます。
心理的安全性の「4つの不安」とは
心理的安全性を理解する際には、「4つの不安」という考え方もよく使われます。
人は職場で、自分が周囲からどのように見られるかを気にします。
その結果、本当は必要な質問や提案があっても、次のような不安によって行動を控えてしまうことがあります。
- 無知だと思われる不安
「そんなことも知らないのか」と思われることを恐れ、分からないことがあっても質問しなくなります。 - 無能だと思われる不安
失敗や困りごとを見せることで、「仕事ができない人」と評価されることを恐れ、ミスや問題を隠してしまいます。 - 邪魔をする人だと思われる不安
会議で異論や問題点を指摘すると、「話を進める邪魔をしている」と思われることを恐れ、違和感があっても黙ります。 - ネガティブな人だと思われる不安
リスクや問題点を伝えることで、「否定ばかりする人」「後ろ向きな人」と思われることを恐れ、必要な指摘を控えます。
4つの不安が強いと、なぜ心理的安全性が下がるのか
人は、自分にとって不利益がありそうな行動を避けようとします。
職場で質問した結果、馬鹿にされた経験があれば、次から質問しなくなるかもしれません。
ミスを報告した結果、大勢の前で強く責められた経験があれば、次からはできるだけ隠そうとするかもしれません。
つまり、社員が発言しないのは、「意欲がないから」とは限りません。
その職場の中では、黙っていることが自分を守るための合理的な選択になっている場合があります。
心理的安全性を高めるためには、単に「もっと発言してください」と呼びかけるだけでは不十分です。
発言しても不利益を受けない、むしろ必要な発言が歓迎されるという経験を積み重ねる必要があります。
4つの因子と4つの不安はどう関係するのか
4つの因子と4つの不安は、別々に覚えるよりも関係づけて考えると理解しやすくなります。
たとえば「話しやすさ」が低い背景には、「無知だと思われたくない」「ネガティブな人だと思われたくない」という不安があるかもしれません。
「助け合い」が起きない背景には、「無能だと思われたくない」という不安がある可能性があります。
「挑戦」が少ない背景には、失敗したら無能だと思われるという不安が影響しているかもしれません。
「新奇歓迎」が弱い職場では、周囲と違う意見を出した人が「邪魔をする人」と見られやすいことがあります。
- 話しやすさ × 無知・ネガティブへの不安
質問や問題提起をしたことで評価を下げられるという不安を減らし、必要な発言を歓迎することが大切です。 - 助け合い × 無能への不安
助けを求めることを能力不足とみなさず、早く相談することを適切な行動として評価します。 - 挑戦 × 無能への不安
結果だけで評価するのではなく、挑戦した理由や、失敗から何を学んだのかも確認します。 - 新奇歓迎 × 邪魔・ネガティブへの不安
異論を「面倒な発言」と扱わず、チームが見落としている視点かもしれないと受け止めます。
4つの因子を高めるために職場でできること
心理的安全性は、理念を掲げるだけでは高まりません。
日常のコミュニケーションや会議、上司の反応など、小さな行動の積み重ねによってつくられていきます。
話しやすさを高める
- 上司から質問する
「何か質問はありますか」だけではなく、「分かりにくかったところはありますか」「懸念していることはありますか」と具体的に聞きます。 - 反対意見にまず感謝する
異論が出たとき、すぐに否定するのではなく、「言ってくれてありがとう」と一度受け止めることで、次の発言につながります。 - 失敗を早く共有したことを評価する
ミスそのものだけを見るのではなく、早い段階で報告した行動も評価します。
助け合いを高める
- 困りごとを共有する時間をつくる
定例ミーティングなどで、「今困っていること」「助けてほしいこと」を共有する時間を設けます。 - 上司自身も助けを求める
リーダーが完璧な人を演じるのではなく、「ここは詳しくないので教えてほしい」と言うことで、相談しやすい雰囲気をつくれます。 - 助けた人も評価する
個人の成果だけでなく、周囲を支援した行動も認めることで、協力する文化が育ちやすくなります。
挑戦を高める
- 小さく試せる環境をつくる
最初から大きな変更を求めるのではなく、小規模なテストから始めることで挑戦への不安を下げます。 - 結果だけでなく学びを確認する
うまくいかなかった場合も、「何が分かったのか」「次はどうするのか」を振り返ります。 - 失敗を責める会議にしない
誰が悪いかを探すのではなく、原因と再発防止、次の改善を中心に話し合います。
新奇歓迎を高める
- 全員が発言する機会をつくる
発言力の強い人だけで会議が進まないよう、一人ずつ意見を聞くなどの仕組みを取り入れます。 - 違う意見の理由を聞く
自分と異なる意見が出たら、「なぜそう考えましたか」と背景を確認します。 - 価値観の違いを知る
人によって何を重視するか、どのような伝え方を好むかは異なります。お互いの違いを知ることで、無用な対立を減らしやすくなります。
4つの因子すべてを一度に改善しなくてもいい
自分たちのチームを振り返ると、「話しやすさはあるけれど、挑戦が少ない」「助け合いはあるけれど、違う意見が出にくい」といった特徴が見えてくることがあります。
すべてのチームが同じ課題を抱えているわけではありません。
そのため、心理的安全性を高めるときには、自分たちのチームで特に弱い部分を把握することが重要です。
たとえば、会議で発言が少ないのであれば話しやすさから改善する。
新しい提案がまったく出ないのであれば、挑戦や新奇歓迎の状態を確認する。
問題が発生すると個人が抱え込んでしまうのであれば、助け合いを重点的に見直す。
このように、現在地を確認したうえで改善テーマを絞る方が、具体的な行動につなげやすくなります。
心理的安全性を測るときも「点数だけ」で判断しない
心理的安全性を確認するために、アンケートやチェックリストを活用することは有効です。
ただし、点数そのものだけで「良いチーム」「悪いチーム」と判断することはおすすめできません。
大切なのは、なぜその結果になったのかを話し合うことです。
たとえば「困ったときに助けを求めにくい」という結果が出た場合、その背景には業務量、人間関係、上司の反応、評価制度など、さまざまな理由が考えられます。
診断は結論ではなく、対話を始めるきっかけとして活用することが重要です。
4つの因子を支えるのはメンバー同士の関係性
話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎を高めようとして、会議のルールや1on1、アンケートなどを導入する企業があります。
こうした仕組みは役立ちますが、その前提として重要なのがメンバー同士の関係性です。
相手を信頼できない状態で「自由に意見を言いましょう」と言われても、本音を話すことは難しいでしょう。
自分と異なる価値観を持つ人を理解できていなければ、違う意見が出たときに「なぜそんなことを言うのか」と否定的に受け止めやすくなります。
そのため心理的安全性を高めるには、制度やテクニックだけではなく、お互いの価値観や考え方を知り、良い関係性と信頼関係をつくることが重要です。
性格タイプ診断テストを使って「違い」に気づく
心理的安全性の作り方教室では、チームの相互理解を深める方法の一つとして「楽しみながら、自分と相手の違いに気づける」性格タイプ診断テストを活用しています。
人は、自分にとって当たり前の考え方を、相手も同じように持っていると思いがちです。
しかし実際には、何を大切にするか、どのような言葉に反応するか、どのような進め方を好むかは人によって異なります。
性格タイプ診断テストを通じて、「自分はこういうことを重視しやすい」「あの人は自分とは違うところを大切にしている」と気づくことで、相手の言動を理解しやすくなります。
この相互理解が、話しやすさや助け合い、新奇歓迎など、心理的安全性を支える関係性につながっていきます。
ご参考:性格タイプ診断テストの選び方
心理的安全性の4つの因子を研修で考える
心理的安全性について知識だけを学んでも、日常の行動が変わらなければ職場は変わりません。
そのため、心理的安全性研修では、自分たちのチームを題材にして考えることが重要です。
「自分たちの会議では本当に反対意見を言えるのか」「困ったときに誰へ相談できるのか」「失敗した人にどのような反応をしているのか」と振り返ることで、具体的な課題が見えてきます。
心理的安全性の作り方教室では、講義だけではなくグループワークを中心に、自分たちの職場の現状を確認しながら改善行動につなげる研修を行っています。
よくある質問
- 心理的安全性の4つの因子とは何ですか?
-
心理的安全性を考える際の4つの因子として、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」という視点があります。単に会話しやすいだけではなく、困ったときに助けを求められること、新しいことへ挑戦できること、異なる意見や個性を歓迎できることまで含めて心理的安全性を捉えます。
- 心理的安全性の4つの不安とは何ですか?
-
職場で発言や行動をためらう背景として、「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「邪魔をする人だと思われる不安」「ネガティブな人だと思われる不安」があります。こうした不安が強いと、質問、相談、問題提起、挑戦などを控えやすくなります。
- 4つの因子と4つの不安は同じものですか?
-
同じものではありません。4つの因子は心理的安全性が高いチームの状態を理解するための視点で、4つの不安は人が発言や行動をためらう背景を理解するための視点です。両方を合わせて考えることで、職場の課題を具体的に見つけやすくなります。
- 心理的安全性の4つの因子は、どれが一番重要ですか?
-
どれか一つだけが重要ということではありません。チームによって課題は異なるため、現在どの因子が弱いのかを確認することが大切です。話しやすさは高くても挑戦が少ないチームや、助け合いはあるものの異なる意見が出にくいチームもあります。
- 心理的安全性を高めるには何から取り組めばよいですか?
-
まず現在のチームで、話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎のどこに課題があるのかを確認することをおすすめします。そのうえで、会議での発言方法、相談の仕組み、失敗時の振り返り、相互理解など、具体的な行動を改善していきます。
まとめ|4つの因子から自分たちの心理的安全性を見直そう
心理的安全性の4つの因子として、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」という視点があります。
そして、それらを妨げる背景には、「無知だと思われたくない」「無能だと思われたくない」「邪魔をする人だと思われたくない」「ネガティブな人だと思われたくない」といった不安があります。
心理的安全性を高めるためには、「発言しましょう」「挑戦しましょう」と呼びかけるだけでは十分ではありません。
なぜ発言できないのか、なぜ相談できないのか、なぜ挑戦を避けるのかという背景まで考えることが重要です。
また、4つの因子を支える土台になるのが、メンバー同士の相互理解と信頼関係です。
まずは自分たちのチームがどのような状態にあるのかを確認し、できるところから一つずつ改善していきましょう。
心理的安全性そのものの意味や基本から確認したい方は、心理的安全性とは?もあわせてご覧ください。
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